北斗の拳に影響を与えたマッドマックス
北斗の拳よりマッドマックスの公開の方が早い
映画『マッドマックス』シリーズと漫画『北斗の拳』、両作品には多くの共通点が見られますが、作られたのは『マッドマックス』の方がはるかに早いです。
両作品とも近未来の荒廃した世界が舞台ですが、これはSFなどでよくある設定です。
両作品とも日常とはかけ離れたアクションシーンにあふれていますが、これを現実の世界を舞台に行おうとするとかなり無理が生じます。
その点、近未来の荒廃した世界が舞台なら、どんなに非日常なことが行われていても「そういう世界だから」で見る者も納得です。
また、どちらも既存の社会システムが廃れた時代への不安から、人間が暴力に訴えるようになった世界が描かれています。
『マッドマックス』の場合、敵は暴走族で、単に車やバイクを暴走させるだけでなく、見る者に同情の余地を与えないような悪質、卑劣、残虐な行為を働きます。
『北斗の拳』のなかにもそのような救いがたい悪人が出てきますし、『マッドマックス』と同じように主人公に厳しく裁かれる点も共通です。
加えて、『マッドマックス』と『北斗の拳』、どちらも主人公が似ています。
メル・ギブソン演じるマックスとケンシロウではイメージが違うかもしれませんが、もともと心優しい男が大切な人を傷つけられ悪を倒すために立ち上がるという設定は同じです。
また、自分の力が足りないために大切な人を傷つけられたりする点も似ています。
そこからさらに強い覚悟を持って、大切な存在を取り戻すために決意するという心の動きも、似ていると言えば似ているのではないでしょうか。
マッドマックスが北斗の拳に与えた影響
このようにさまざまな点で似ている『マッドマックス』シリーズと『北斗の拳』ですが、映画第1作の『マッドマックス』が公開されたのは1979年です。
そのヒットを受けて作られた2作目の『マッドマックス2』も公開は1981年ですから、1983年に週刊少年ジャンプで連載が始まった『北斗の拳』よりはるかに早いことがわかります。
戦争で荒廃した世界で暴れまわるモヒカン男たちという『北斗の拳』の世界観は、『マッドマックス2』の影響が色濃いでしょう。
実際、その影響は『北斗の拳』の作者も認めています。
主人公ケンシロウの造形も、メル・ギブソン演じたマックスの影響だそうです。
ただ、ケンシロウは100%マックスではなく、容姿ではブルース・リーの影響も受けています。
実際ケンシロウはヌンチャクを武器に戦ったこともありますが、これはそもそも北斗の拳が誕生するきっかけとして、「『マッドマックス2』の世界観でブルース・リーが活躍したら」という想定があったからだそうです。
というわけで、『マッドマックス』の方が先で、それが(特に『2』が)『北斗の拳』に影響を与えたということになります。
いずれにせよ、どちらも非常に面白い作品であることには変わりません。