コアな人気を誇るヒューマンガス”様”

ヒューマンガスの役回り

荒くれ者たちをまとめるリーダーとして『マッドマックス2』に登場するのが、スウェーデン人俳優ケル・ニルソン演じる「ヒューマンガス」です。
日本のファンからは畏敬の念を込めて「ヒューマンガス様」と呼ばれています。
自らを支配者と呼び、「ロックンローラーのアヤトラ」とも自称し、いつもホッケーマスクを顔にかぶった、鍛え上げられた肉体を見せつけるような半裸姿が特徴です。
スミスアンドウェッソンの拳銃を武器に、石油精製所をウェズたちを率いて襲います。

ちなみに「ロックンローラーのアヤトラ」の「アヤトラ」とは、イスラム教シーア派の権威に与えられる「Ayatollah」という称号で、学識豊かで著名な宗教学者に与えられます。
一方、ロックンローラーとは反体制のシンボルのような存在ですから、ヒューマンガス様は自ら反体制の権威であることを表しているのです。

『マッドマックス2』では、石油精製所から出てきた人たちを捕まえ、パッパガーロたちに立ち去るよう命令します。
トラクターを入手したマックスに対して、人質を拷問して見せしめにするような残忍な面も見せました。
一方で規律を重んじる面もあり、ウェズが命令を無視してマックスを追ったときには首に鎖をつけて自由を奪うなどもします。
最終的にはタンクローリーと衝突して華々しく命を散らせることになりますが、今でもマッドマックスシリーズのなかで特に人気の高いキャラクターの一人です。

ヒューマンガスが人気の理由

半裸姿にホッケーマスクという奇妙な出で立ちで、かつ非常に残忍なところもあるヒューマンガスですが、それでも彼への人気は絶えません。
まず、敵役でありながら器の大きなところが多くの人を魅了する理由の一つです。
そもそもイカれたモヒカン男たちを統率しているわけですから、強いリーダーシップとともにカリスマ性にもあふれた人物であることがわかります。
なお、日本では「ヒューマンガス様」と畏敬を込めて呼ばれると述べましたが、英語でも「Lord Humungus」と敬称付きで呼ばれています。

敵役だけにヒューマンガスも最終的に死ぬわけですが、死んでも素顔をさらさなかったところも人気の理由ではないでしょうか。
通常、この手の仮面の悪役は素顔をさらして死にますが、ヒューマンガスがそうならなかったのは、実はマックスの相棒ジム・グースが正体だからという設定があったからだそうです。
最終的にそのような設定はなくなりましたが、彼の愛車のパーツには警察の痕跡が見られるように初期設定を窺わせる要素は残されています。

ヒューマンガス様の印象を決定づけたのは、やはり初登場シーンでしょう。
石油を独り占めする偽善者を糾弾する名演説を見せますが、主人公マックスより弁が立つその姿には説得力がありました。